私自身のこと

 私には、知的障害、自閉症、弱視の重複障害を持つ11歳の長男がいます。生まれた翌日には、主治医の先生から療育についてご説明を受け、その頃から「親なきあと」について備えていかなければ、と考えてきました。

 息子が成長するにつれ、様々な同じ立場の親御さんと出会い、それぞれにいろいろな悩みをお持ちであることを見聞きしました。同じ当事者である私に何かできることはないかと考え、その一歩として資格を取得し、事務所を開所いたしました。

 行政書士という資格で特別な障害者支援ができるわけではありませんが、成年後見制度の知識や法令に関する知識をもって、同じ立場の方々と歩んでいきたいと考えております。

「親なきあと」に備えるために

 「親なきあと」問題は古典的な問題ではありますが、ノーマライゼーションの考え方のもと、備えるべき対策が変化しています。以前は行政の措置として行われてきたことが、現在では、当事者が検討して選ぶようになりました。しかしながら、まだ歴史が浅く、たびたびの法改正や裁判所の判断など、指針となるべきものも刻々と変化しており、当事者の方々の迷いや悩みが尽きることはありません。
 当所では、それらの問題についてすべて解決できるわけではありません。障害を持つ方々がお一人ごとに別々の人格を持つことと同様に、備える対策もそれぞれ異なります。唯一の正解等はありえない事柄でありますので、一緒に考えて、より良い道を探すことを目的としています。
 障害をもつご本人のため、ご本人のご家族のため、ひとつひとつ、よりよい道を探していきたいと考えています。

障害者施策の歴史

 日本では、急速に少子化、超高齢化が進んでいます。そこで、社会保障費の抑制、自己決定権の尊重という観点から、2000年代に入り、介護保険制度、障害者自立支援法および総合支援法が制定・導入されました。それらにより、介護や障害者のサービスを行政が一方的に決めてしまう「措置制度」から、利用者が選んで決める「契約」制度に変わりました。
 そのため、利用者(とそのご家族)としては、より良いサービスを受けるために、知識や情報を得て判断しなくてはなりません。待つだけではより良い方向に向かうことが難しい制度であるのかもしれません。

「親なきあと」の問題を分けて考えてみる

 親なきあと、のことを大きく2つに分けて考えてみます。

① 住まいのこと
② お金のこと

① 住まいのこと
 住まいによって、お金のこと、利用する制度、関わる人が変わります。最初の不安はお金に関することが多いと思いますが、住まいによって必要となるお金も関わる方も変わります。イメージでも結構ですので、最初に住まいの事から考えていきましょう。
 将来的には施設で過ごしてもらいたい、一人暮らしをしてもらいたい、など親御さんのお考えがあるかと思います。最近では住まいの選択肢が増えつつあるようですが、地域差が大きいようです。お住まいの地域の社会福祉協議会、地域包括支援センターなどで情報を得られるかもしれません。

・障害者支援施設(入所施設)
・グループホーム
・福祉サービスを利用した一人暮らし(サテライト型住居) など

 知識を得て検討し、ご本人の希望に沿えるかどうか、具体的にイメージしながら考えていきましょう。

② お金の事
どのご家族でも最初に考えることは、「この子のためにいくら遺したらいいんだろう?」、という事だと思います。(私自身もそうでした。)しかし、遺すことだけでなく、それがご本人の将来のために使われる仕組みも準備する必要があります。難しく感じるかもしれませんが、ひとつひとつ準備すればいい、と考えていきましょう。
具体的には、以下の対策が考えられます。

・遺言
・家族信託
・生命保険信託
・障害者扶養共済制度
・障害年金      など

<補足>
 障害基礎年金という国の制度があります。私は行政書士のため専門外となりますので、一般的なお話しをいたします。(専門は社会保険労務士です。)
 知的障害・自閉症など先天性の傷病は、二十歳前傷病による障害基礎年金を受給する権利が20歳になると発生しますが、請求しなければ受け取ることができません。また、二十歳前傷病でも、20歳より後に障害認定を受けた方も医師の診断書やその他証明書類などが必要となります。

 例外の多い手続きになるそうなので、行政の担当部署や社会保険労務士へ相談されることをお勧めいたします。住まいやお金のことを検討するうえで重要な要素となります。

成年後見制度について

 ご本人の支援のことを考えると、成年後見制度の利用が思い当たると思います。この制度により、ご本人の財産の保護、契約の代理などによるフォローができるようになりますが、まだまだ拒否感を感じられる方も多いようです。制度利用促進のため、少しずつ利用しやすい方向に変化しつつありますので、正しい知識の更新が必要です。
 しかしながら、成年後見制度利用だけではフォローできない部分があり、ご本人の支援のためには、成年後見制度の利用は支援の輪を作る一部分に過ぎません。

 ご本人を支える輪を作るため、ご家族もご本人も社会とのつながりを持ちましょう。ご本人を支える輪ができていれば、いざという時にその輪が支えてくれることになると思います。

親なきあと、がまだ先の事だと考えている方

最近はエスカレーターや動く歩道が
好きです

 障害を持つご本人がまだ小学生など、親なきあとが先の話だと考えている方もいらっしゃるでしょう。(私もそのうちの一人です。)
 私個人としては、将来のイメージを持ちつつ、本人の得意なこと・興味のあることを伸ばせるよう日々努力しているつもりです。上手になれたり、なかなかうまくいかなかったり、模索する毎日です。特に最近は第二次性徴期になり、今まで出来たことができなくなったり、より強くこだわるようになったり、、、なかなか大変です。(笑)

 すでに成人されている方であっても、興味のあること・心が動かされることによって、積極性が高まり、それにより生活全般に良い効果をもたらすことがあるそうです。

 小さなお子さんでも、成人された方でも、何に興味があるのか、何に心を動かされたのか、を見つけることができればより良い方向に向かう可能性があると思います。そのために、いろいろな経験をしたり、様々な場所に行ったりすることがとても大事であると考えます。
 希望を捨てず、学び、考えていきます。